導入事例
Case2
日本精工株式会社 (NSK) 新領域商品開発センター 様 G-ZERO L1 導入事例

世界トップクラスのベアリングメーカー、日本精工株式会社(以下、NSK)。その確かな技術力をベースに、現在同社はロボティクスをはじめとする「新領域」の商品開発を加速している。 今回は、商品開発を担う技術開発本部 新領域商品開発センター所属の難波竜三郎氏とそのチームを取材し、単なる「試作ツール」としてではなく業務を前に進める「武器」として 3Dプリンターをどう扱っているのか、その現状を伺った。

新領域商品開発センターでは、メカトロニクスや高精度加工のノウハウを転用しつつ、新たな領域を開拓しうる「商品」として成立させるために多岐にわたる業務が行なわれている。 試作品を完成品とするための試作サイクルは勿論のこと、展示用モック、要素ごとの原理検討、試験や組付けのための治具など、製品そのもの以外にも数多くの“ものづくり”が生まれる場になっているという。
商品を構成する要素部品については、購入品・加工品を外部から調達することで必要を満たすことがほとんどだというが、調達プロセスには「見積取得」「社内での購買申請」「発注後のリードタイム」など、チーム外の都合で時間を取られがちになってしまう。 「社内手続きや相手先納期を含めると、1か月ほどかかることもある」と語る難波氏。 短い期間内で結果を出す必要がある場面において、このボトルネックを解消することは至上命題となる。 そこでNSKでは、用途に応じて他機種も併用しながら、L1をここ一番の「武器」として投入する運用が形になっていた。

センターの中でも、難波氏の所属するチームは、主にロボットの脚回りといった「コンポーネント製品」を商品化するミッションを課せられている。直近では、差動機構を活かした『アクティブキャスタPalGo™ 』の市場投入に向けて精力的に活動中だ。
難波氏はこのチームでメカ設計や実機評価を担当しており、エレキや制御といった専門を有する他のメンバーと協働している。グループは十名程度の規模で、半数以上が3D CADを扱える体制だ。 メカ担当は設計業務に加えて、原理試作や設計の妥当性を検証するための治具づくりも担う。試作品は完成品ではないため、部品同士の取り付け方や基準(原点)が頻繁に変わる。だからこそ、現場では“今の試作品に合わせた形”を、その都度、短時間で用意する必要が出てくる。 こうした業務でG-ZERO L1が効いているのは、単に「作れる」からではなく、基準出しなどの段取りで必要になる、一定の精度と再現性を元に、迷いなく使える点に価値があるのだという。

製品化の局面では、突発的な要求が飛び込む。電気系部品の固定板などは典型で、「今日ほしい」「明日までに合わせたい」という形で現れることがある。そこで3Dプリントが効くのは、造形が速いからだけではない。やり直しを含めた意思決定を、現実的な時間幅の中に収められる点にある。 難波氏は次のように語っている。
「電気担当から急に、『これを固定する板が欲しい、固定穴はここで』と言われた時に、すぐに対応しやすいのがありがたいです。本当に2〜3時間でできちゃう時は、そもそも工数に含めていないような仕事としてパッと受けられる。一回作ってダメでも、すぐ作り直せばいいので、手戻りのリスクも小さいです」

展示用途では、造形物がそのまま展示品になる。特に大物部品では、分割が必要になると継ぎ目や組付けの手間が増え、見栄えが落ちやすい。他社機器だと「どうしても分割が必要で、展示品に堪える外観になりにくい」と難波氏は語る。 L1はこの場面で、「大きいものを分割せずに出せる」のが利点だ。
見せ方の工夫も同様である。実際の例として、「アクティブキャスタPalGo™ 高荷重タイプ」の展示用デザインモックを作成する際に、タイヤのトレッド部にロゴマークの意匠を取り入れたり、側面に文字の刻印を仕込んだりといった工夫が凝らされた。 通常、刻印や加飾は工法によって追加工程や費用増につながりやすいが、3Dプリントでは形状に織り込んだ意匠がそのまま出る。展示の説得力を上げながら、段取りを増やさないという意味で、現場と相性がよい。 「3Dプリンターなら、いくらデボス(凹み文字)加工を入れても、加工の難易度も費用も変わらない。デザインモックとしては十分合格点でした」


日々のエンジニアリングの中で、発想を即座に形にして、問題の可視化をできる点も3Dプリンターのメリットだ。
従来では複数のアイデアがあっても、納期やコストなどの観点から妥当だと考えられる案ひとつを選び取って進める場合が多かったが、3Dプリンターは納期とコストの両方を解決して、すべてのアイデアを素早く手軽に試すことが出来る。
これにより、想定していなかった問題点や見えづらい課題なども直ちに可視化され、「失敗を先取りする」ことができるようになったとプロジェクトを管理している近藤大介氏は語る。
「ロボ展(国際ロボット展2026)で、展示物を乗せる土台を作る際も、3つほどあったアイデアをすべて造形し、実際に試すことで評価を行うことができました。 そして実際に試すことでわかる課題もすぐに洗い出すことができ、よりブラッシュアップしたものを造形する。これらの工程を短時間、低コストで行うことができるのは3Dプリンタがあったからだと考えます。」
他の工法だとコストや納期などの面で躊躇してしまうところも3Dプリンタならある意味「気軽に」失敗が素早く出来る。それが結果的な工数の余裕や、クオリティの向上、エンジニアの創造性の醸成にもつながっているという。

NSK側の運用は「1台で全部」ではない。小物や多色が必要なものについては他社製品を使い、L1は大きいもの、精度が要るもの、安定して仕上げたいものに回すという。 「他社製品だとベッドの温度分布が不均一で、造形が失敗してしまうこともあります。精度とか、大きめのものの出しやすさという点では、L1 の方がいいなと感じます」と、 現場で手を動かすからこその実感が語られた。 さらに、材料と温度レンジの違いも住み分けを補強している。現在利用している他社製品にはエンクロージャがなく、ASAに代表されるエンジニアリングプラスチックの造形が難しいという意見もあった。 安定した仕上がりが求められるほど、L1は“最終的な品質を託せる1台”として位置づけられている。

今後の展望として語られたのが、高機能材料(例:POTICON FILAMENT)の扱いである。 POTICONフィラメントの持つ摺動性を代表とした高機能な特性を、小ロットで生産できる点には大きな魅力がある。具体的にどの部品に適用していくか、材料的アプローチを具体の調達方法に落とし込むことが、NSKにおける次の3Dプリンター活用のフェーズとなるだろう。
G-ZERO L1 の製品情報はこちら
製品詳細
製品詳細
Contact / Quote