導入事例
Case1
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)様 G-ZERO L1 導入事例

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の レジリエントICT研究センター は、その名の通り“途絶えない通信”の実現を目指す研究部署だ。 今回は、同センター サステナブルICTシステム研究室 研究技術員 佐藤 剛至 氏(写真:右)と、NICTの試作を支える立場である業務企画部 電波利用管理・ものづくり室 ものづくりグループ 主査 木戸 耕太 氏(写真:左)に研究現場の実態とプロトタイピングの重要性について伺った。


レジリエントICT研究センターの起源は、2012年に東北大学内に設立された「耐災害ICT研究センター」に遡る。
東日本大震災を契機に、災害対応通信技術を研究する拠点として立ち上げられた同センターは、2021年頃に現在の「レジリエントICT研究センター」へと改称された。
「当初は仙台を拠点にしていましたが、SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)でのプロジェクトが進むにつれ、東京拠点の方が適している場面も増えてきました」と佐藤氏。
現在は首都圏での活動を中心に、災害時通信技術の実証や開発を進めている。

同センターの研究テーマは、災害現場での通信を支えるための技術開発だ。ドローンや車両などに通信装置を搭載し、空中・地上を組み合わせてネットワークを構築する。
これにより、被災地の通信範囲を拡大し、データ伝送やサーバー機能を提供することができる。
「自衛隊、警察、消防などの災害実動機関が主な利用主体となることを想定したものです。NICTは技術面から防災訓練に実証要素を組み込む提案を積極的に進めています。」

佐藤氏が所属する「研究技術員」という職種は、いわば研究と実装の橋渡し役だ。「我々の仕事は、基礎理論の探究よりも“どう社会で使えるか”に焦点を当てています。 プロトタイピングを繰り返すことで、研究成果を実用段階に近づけることができるんです。3Dプリンターを使えば今日話したアイデアをその日のうちにモデリングして、翌朝には形にできる。このスピード感が非常に重要です」


木戸氏は3Dプリンターを“使い倒している”という。導入より10か月経った今、累計造形時間は1539時間超に及ぶという。
緻密なラティス形状で構成された球体をTPUで造形した際などは、二日以上にわたる長時間造形となったが見事に造形を成功させた。
「週末に設定して月曜には完成、というのが日常です。利用頻度は導入前の2倍以上に増えました。」と木戸氏。
プロトタイプには、ドローン搭載通信装置の筐体や、MRI装置内で使用するセンサー保持具なども含まれる。「装置によってはサーバー機能やバッテリーの搭載もあり得るため、軽量化や重心設計が重要になります。現場で発生した問題の改善案なども思いついてすぐに実行にできます。」

国立研究機関であるNICTでは、予算執行や調達に厳しいルールがある。
「外注は、仕様書作成から稟議、入札、契約まで1ヶ月はかかります。しかも、仕様書を少しでも間違えるとやり直しです。我々のような研究技術員は、“会計監査に堪える仕事”と”手戻りを無くすための”詰め”にリソースを割きます。アジャイル開発は手戻り対策のため選択できないのが普通でした。」と佐藤氏。
開発はウォーターフォール進行、システムの外部発注などは発注に半年を要することもあるという。
「開発スピードの向上以外にも、私たちのリソースを最大限に活かすためにNICT内部で完結できる試作環境の整備が極めて重要だと感じています。」

今後の展望について伺うと、木戸氏は「高機能樹脂の活用」を挙げた。
「極低温や薬品洗浄など、特殊環境に対応できる材料を使っていきたい。動作機構や強度部品も3Dプリントで実現できれば、さらに研究の幅が広がります。」
CEATECへの出展など、外部発信も徐々に進めている。「普段は広報的な活動は少ないですが、他の研究機関とも連携しながら、社会実装につなげていきたいですね。」
災害時通信という社会的使命を担うレジリエントICT研究センター。その舞台裏では、現場に即した“ものづくり”が着実に進んでいる。
研究と実装の間を確かなスピード感をもってつないでいく。 佐藤氏、木戸氏らは今日も次の課題へと歩みを進めている。

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